インタビュー03

高校の求人にやりたい職種がなく、
自分で探した「製造」の募集。

子どもの頃から工作は好きでしたが、仕事にはそれほどこだわりはなく入社はたまたまなんです。「店員」より「製造」がいいな、くらいで。実家で当社のダイニングセットを使っていたので社名は知っていましたが、旭川家具といえばタンスのイメージ。面接のときショップに並ぶスマートな家具を見て驚いた記憶があります。
最初の配属は、工場でテーブル天板に突板(薄い木の板)を貼る業務。先輩の女性が3カ月後に退職するからその後任としてでした。製品に合う材料を選び、幅を揃え、順番を考え……たった3カ月では覚えきれません(笑)。基本的な機械作業などを習い、あとは課長が「1人前になるのに2年以上かかるな」と言いながらそばに付いてひたすら教えてくれました。

「木目と向き合う」難しさ、
最後は自分の感覚です。
でもそれが面白い。

天然素材の突板は1枚も同じものはありませんから、そのときどきで材料を見て配置を決めていきます。基本、判断するのはひとり。以前はほかの人にも見てもらって、いろんな意見を聞くうちわからなくなることがあったんですが、上司が「君たちの判断にまかせる」と言ってくれました。今は「ランダムマッチ貼り」が主流なのですが、この「ランダム」が難しいんです。白っぽい、黒っぽい、赤っぽいなど個性があり、同じ色ばかりを並べるとほかとの差が目立つし、交互や順番をつくるとパターン化してしまう。バランスをとるためテーブル天板1枚に約1時間かかることも。作業時間より悩んでいる時間の方が長いですね。ショップに並んでいるテーブルやキャビネットを見れば、自分が手掛けたものかどうかすぐわかります。同じ材料でも、私がやるのと別のスタッフがやるのとでは表情が変わるんです。

新しい機械の導入で、作業が早くなり精度もアップ。

入社して10年くらいまでの突板接着の機械は、ポリエステルの糸で縫うように接着するものでしたが、接着不良など表に響く問題があり、2013年に今の主軸となっている「グルースプライサー」が導入されました。突板や単板の側面に接着剤を塗って熱で瞬時に硬化させる機械で、これにより仕上がりが格段に安定しました。

材料選びも慎重です。節に穴がある材や部分的に厚みが違っている材などは、本体に貼る前に発見しなければ、ここまでの作業が水の泡になる。かといって1枚ずつ端から端まで丹念に見る時間はありません。ただ20年もやっていると、手にした瞬間違和感があるときが。おかしいと思った材をしっかり見て、やっぱり、となる場合も多くあります。私たちつくる側は節がなく色も焼けていないきれいなものを求めがちですが、木材も昔のように豊富ではありません。現在積極的に使用量をふやしている北海道産材も、輸入材に比べて難易度が高い。とにかく届いた材料をいかに無駄なく形にするかをいつも考えていますね。


長年取り組んでいる社内の改善活動は、
ラクしたい、という発想から(笑)。

当社には、すぐれた「改善活動」を表彰する報奨制度があります。思い出深いのが、サイドテーブル「ガーベラ」に関わる改善。ある日創業者の長原さんに「突板の端材が溜まっていくのがもったいない」と相談しました。しばらくして長原さんがデザインを持って来てくれて、これがとても難しかった。突板を風車のように6枚接ぎ合わせるのですが、最初は手作業で貼り合わせており40台分つくるのに1日半かかりました。大変なので試しに機械に通してみたらさらっとできちゃった。それ以来ほかの製品にも応用しています。
また天板に突板を貼った後、はみ出た部分を手作業で削り落としていくんですが、その作業が大変そうでしかも無駄に見えた。それで突板を貼ると同時に端を落とせる改善を考えたら作業がとてもスムーズに進み、後工程の女性にもすごく喜ばれました。

カンディハウスは男女や年齢に関係なく意見を言うことができる会社です。上司はこちらの提案に協力的ですぐに行動してくれますし、コミュニケーションの取りやすい環境だと感じます。女性が不利なのは力くらい。そのぶん私も気が強くなりました(笑)。20年を振り返ると、自分でも知らなかった自分の性格を引き出してもらったのかなと思います。

やめようと思ったこと?最初は入社してすぐ、その後も何度か(笑)。
でも今は未来を考えてる。

正直、入ったときは家具が好きも嫌いもなく、ただ忙しい会社という印象でしたが、10年経った頃初めて「私この仕事好きかも?」と。大きいものを完成させる達成感がわかってくると、6mの特注テーブルを受注したときなど、「やってやろうじゃないの」という気持ちになるんです(笑)。2021年4月から係長になって、自分の仕事の前に人の作業や全体の進捗をみる立場になりました。部署全体を気にかけ、予定通りに進んでいないときは手伝いを集めたりもします。思えば私も上司にそうしてもらっていたんですね。

これからやってみたいのは、今の仕事の前後工程を勉強すること。そこがわかれば、もっと木のありがたみが感じられる気がするからです。木といえば、精神のバランスを取るために趣味でやっているアロマオイルも、好きなのは木の匂いなんです。「美容師になりたい」と言っていた私を知っている両親も驚いているのでは。世の中が落ち着いたら、また好きな旅行に出掛け、違う景色や体験でリフレッシュしたい。戻ってからの仕事に対する意識も変わって新鮮なんですよ。

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