インタビュー06

日本に興味を持ったのは10歳。
それからずっと、日本は「私の居場所」。

10歳のとき、テレビで明治から現在までの日本の伝統とテクノロジーの変化を取り上げたドキュメンタリー番組を見たんです。それが面白くて日本人の考え方を知りたくなり、両親が買ってくれた日本の本を読んだり、パリのJAPAN EXPOにも行きました。日本文化を知ろうと読んだ本は300冊以上、アニメーションも300作品以上観ていて、コスプレでイベントに参加したことも(笑)。
大学ではナノテクノロジーについて学んだのですが、日本の方がフランスより進んでいることを知り、日本に行ってみようと思いました。大学1年の夏休みに東京を訪れ、観光したあと軽井沢のホテルでインターンシップを経験。それでさらに日本が好きになりました。ものの考え方や生活の仕方に共感し、ここが私の居場所かなと思いました。そして帰国後「卒業したら日本に行こう」と決めたんです。
2017年に日本へ来て、1年間は東京の日本語学校に通いながら病院の皿洗い、ファストファッションブランドの店員、羽田空港のグランドスタッフなどのアルバイトをしました。言葉が通じず苦労したのは最初だけ。何もわからないうちに来てしまったことで逆に早く覚えられたのかも知れません。空港では保安検査場の前で搭乗券を確認したり、乗り継ぎカウンターでお客さまを案内する係でした。やがて責任者に推薦されて正社員に。社員のシフト管理やスキルアップ研修などに携わりました。ところがそこへコロナが起きて、自宅待機や医療施設への出向が続きました。このままでは自分のスキルを上げられないと、転職を考えるようになったんです。

ネットで見つけたカンディハウスの求人。
ここなら自分が向上できる。

私はいずれ経営者になりたいと考えています。海外に行きたい人、海外から日本に来たい人向けの事業をして、もっと日本の美しさを知ってもらいたいのです。いろいろ応募した中で、経営者になるために必要なスキルが身に付けられると感じた会社がカンディハウスでした。デザインや接客にも関心があったし、これまでの経験を生かしてキャリアアップできそうだと。その頃には日本語の本が読めて漢字の読み書きもでき、会話はいわゆるペラペラまで上達していたので面接には困りません。一次面接で東京のスタッフと話してさらに興味が湧き、二次面接では盛り上がって2時間も話してしまいました(笑)。
2022年1月に東京ショップの営業として採用されました。東京は外国人のお客さまも多いので、小学校から大学までの間に習得した英語とドイツ語が役立ちました。人と会って話すと、新しい知識や考え方が持てるので接客は好きですね。難しかったのは製品の知識を頭に入れること。ショップの先輩に教えてもらったり、先輩の接客を横で聞いたり、空き時間に椅子に座ってみて特長をカタログに書き込んで覚えていきました。

北海道の本社への転勤。
迷いがあった中「挑戦しよう」。

旭川本社の経営管理本部への転勤は、入社1年ということもあり、運転免許なしで北海道はどうかな、東京の友人とも離れてしまう…などの不安はありました。でも経営やマネジメントのスキルアップに繋がればと、挑戦することにしたんです。現在は採用を中心とする人事の仕事、社員の労働環境に関わる総務の仕事をしています。といっても守備範囲はとても広く、お客さまの電話対応から社内で起きるアクシデントまで、スタッフで手分けして対応しなければなりません。毎日違うことが起き、じっと席に座っていられませんが、すべてが学びなので大変さは感じません。1日があっという間で、ヒマが嫌いな私にはちょうどいいです。
異動してすぐに、当社の経営方針の柱のひとつで「健康経営」を具現化する「人事プロジェクト」のメンバーになりました。これまでそうしたプロジェクトへの参加経験がなく、インパクトのあるプレゼンテーションや告知の仕方がわからず悩むこともあります。日本語の文法やレポート作成は私の弱い部分だと思います。仕事で面白いのは、会社説明会で学生と関わること。日本の学生はみんな目的を持って申し込むので積極的。具体的に質問してくるしノートも取っています。フランスの学生はふらっと来てなんとなく聞いて、いろんな会社を回る感じですから、ずいぶん違いますね。

目標は、会社を人が集まる場所にすること、
そしてまず管理職になること。

今目指しているのは、カンディハウスをお客さまだけでなく取引先を含めいろんな立場の人が集まる場所にすることです。30歳までに管理職、10年後は役員になるのが目標。管理職になると人と関わる機会がふえ、知識も多く得られるし自分が成長できる。全体を管理できるようになれば、もっといい環境づくりが可能になります。世界中を飛び回る染谷社長を見ていると、フランス支店ができたらいいと思いますね。フランス人は日本に興味があるし、フランス人が発想できないものをカンディハウスはつくっている。そのデザインや美しさは伝わる気がするんです。
休暇が取れると、東京へ行って友だちとカフェや美術館で過ごしたりします。新しい刺激のある旅行が好きですね。旭川にいるときは家で読書したりドラマを観たり、料理をしたり。カレーや牛丼、手巻き寿司。ソースから手づくりするフランス料理も得意ですよ。今年6月にはフランスから来た兄を案内して、初めて美術館や動物園、男山にも行きました。
就職活動についてアドバイスをするとしたら、情報をしっかり集めて「なりたい自分」になれる会社か見極め、やりたい仕事なら挑戦してみた方がいいと思います。失敗したら、その経験を生かして別の場所に身を置いてみても。回り道している間に新しい夢が生まれるかも知れません。不安定な時代だから採用を絞っている企業もあるし、広い視野で、面接をひとつの経験として捉えることも大切。あきらめなければ必ず目指すところへ辿り着けます。日本に住んで6年目。日本へ来るときは怖さもあったけど、行くなら今しかないとも思いました。タイミングは間違っていませんでした。

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