インタビュー07

接客業からものづくりへの転職。
きっかけは、「やってみたい」強い気持ち。

事務職やホテル、大型スーパーなどでのパート勤務が長かったのですが、下の娘が小学校に上がったら、正社員になれる仕事をしようと決めていました。地元のフリーペーパーでカンディハウスの「工場スタッフ募集・未経験歓迎」の広告を見つけて、すぐ「やってみたい!」と。ただDIYはおろか木材を触ったこともない自分にできるのか?と迷いもしました。が、何日経っても自分の気持ちが変わらないので思い切ってエントリーしたんです。書類選考のあとに受けた、製造部長による一次面接はとてもあたたかく楽しい雰囲気。そして二次面接で社長の話を聞いてさらに入社したい思いが強くなりました。総務の方から合格の電話があったときはめっちゃうれしかったです(笑)。
入社して最初に配属されたのは椅子のパーツの粗仕上げ工程。そしてちょうど25日目に「WING LUX[ウイング ラックス]」のダイニングチェアーを仕上げる仕事に変わりました。今までは見るだけ使うだけだった家具が、つくる側になったとたん「ここって、こうつくられてるんだ」と、まったく別な見方をするようになりました。

同じ椅子でも、同じ脚でも、
木はひとつひとつ違う。だから正解がない。

組み上がった状態の椅子は、まず台輪(椅子の座を囲む部分)の後ろからフリーサンダー(研磨工具)をかけていきます。難しいのは、座った人が手で触れる肘や背の後ろ……いえ、全部ですね(笑)。同じ樹種の同じ椅子でも、自然素材である木はひとつひとつ異なるからそれに合わせた仕上げをしなければなりません。私の中では1脚1脚違っていて同じものという感覚はありません。よく人に「(同じ作業ばかりで)飽きない?」と聞かれますが、全然それはないですね。樹種が違えば硬さや表情もまるで違うので、別物と考えて美しく仕上がるよう加減して作業しています。飽きるどころか、もっと木というもののことを知りたくなってきました。木がわかれば仕事のやり方が変わってくる気がするので。

この仕事の楽しさは……。楽しい、とは私はまだ言えないですね。ただやりがいはものすごくあります。こんなに熱中してできるものはほかにありません。朝8時から夕方5時10分まであっという間です。1脚にかけられる時間は15分。目標があると負けたくなくて燃えるタイプなんです。誰にというより自分に対してです。手を抜いて「これくらいでいいや」などと思うくらいならやらない方がいいと思う。
ウイングの仕上げをするようになって1カ月くらい経った頃、研修で初めてショールームに展示されている完成品に座ったときはうれしかったですね。座り心地がよくて本当にびっくりしました(笑)。ただその後、この体験がつくり方に影響しないように意識したんです。変に考えすぎないで、肩肘張らずいつも通りつくるのがいちばんいいと思ったからです。

前職の接客業で徹底した、
「お客様には笑顔で帰ってもらう」。

大型スーパーのサービスカウンターで5年ほど勤務していました。そこに来る人の中には気分を害している人もいます。どんなに怒っていても、最後は笑顔で帰ってほしいと、「完全自分オフ」にしてしっかり話を聞き笑顔で接しました。怒りを鎮めて帰ったお客さまが、次に来ると話しかけてくれることもありましたね。話してみないとわからないから、まず向き合う。そうしないといいも悪いもわかりません。これは転職のときも同じ考えでした。まずやってみないと気が済まない(笑)。でないとずっと迷い続けてしまいます。娘ふたりに対しても同じように、やりたいと言ったことはまずやらせて応援しています。
人と話すのが好きなので、話せる人がたくさんいる今の工場は楽しいです。作業中はひとり集中して黙々とやっていますが、わからないところを先輩に聞いたり、休憩時間やお昼休みにはみんなと雑談したり、メリハリのあるこのバランスがすごく自分に合っていると感じます。

毎シーズン、休みといえばキャンプ。
それもオシャレじゃない超本格派。

もう10年以上、雪が解けてから雪が降るまでの間は毎週のようにキャンプに出掛けています。下の娘なんて首がすわった頃から行ってますから、初めてつかまり立ちしたのがキャンプ場だったほど(笑)。木材会社に勤める夫は、寒ければ薪ストーブを持って行き、食事もBBQではなく、リクエストすれば寸胴鍋で鶏ガラスープを取って手づくりチャーシューでラーメンをつくる人。これがめちゃくちゃおいしいんですよ。これから次のキャンプに向け、また準備が始まります。繁忙期には残業もありますが、週末には休みがきちんと取れ、安心して計画が立てられるのも転職したおかげですね。転職は年齢や業種の違いなど、必ず迷う要素は出てきます。でも一歩踏み出せば、その先に開けてくるものが必ずあります。「やりたい」気持ちを大切にしてほしいと思います。

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